優れた物理的特性を生かして、さまざまな用途に汎用的に使われている素材の1つにバルカナイズドファイバーがあります。今回はバルカナイズドファイバーの特長や用途、主な加工方法と加工の際の注意点などを解説していきます。
バルカナイズドファイバーとは?赤ファイバーとの違いは?
バルカナイズドファイバーとは、セルロースを原料とした紙を塩化亜鉛溶液の中で任意の厚さに積層させて、塩化亜鉛による繊維の膨潤作用を利用して強固に自己接着させたセルロースナノファイバー材料のことです。30分煮沸しても繊維間が結合したまま剥離しないほど強固な特殊紙です。
バルカナイズドファイバーは、環境にやさしい素材とも言われています。天然セルロースを原料とするので、燃焼時の有害ガスの発生が少なく、ファイバーの主成分となっている変性セルロースは地中の微生物により速やかに分解されて自然に戻せるからです。
バルカナイズドファイバーにはさまざまな色がある中で、赤いものが最も広く流通していることから、バルカナイズドファイバーのことを「赤ファイバー」という言葉で表現されることもあります。
バルカナイズドファイバーの主な特長は以下のとおりです。
バルカナイズドファイバーの主な用途
ファイバーの主な用途として、以下の用途が挙げられます。
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・電気機器
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・研磨ディスク
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・溶接マスクやヘルメット
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・建材
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・各種雑貨
バルカナイズドファイバーで最も典型的な用途が、優れた絶縁性を生かした電気機器の絶縁材です。テレビや、オーディオ、冷蔵庫などの絶縁端子板や、電子部品の容器や仕切り板、乾電池の周辺部材、スペーサーやワッシャーなどでも用いられています。
耐摩耗性や耐衝撃性、耐熱性を生かして研磨ディスクや研磨ベルトの基材としても用いられているほか、加工性のよさを生かして溶接マスクやヘルメットなどでも使われています。
建材関連では化粧板用の基材や合板の表面材として用いられているほか、スーツケース、楽器ケース、カバンや靴の芯材、ゴルフクラブ、テスにラケット、剣道の胴当て、スキーの補強材などの用途で用いられているのもバルカナイズドファイバーです。
バルカナイズドファイバーの加工方法
加工方法として、以下のような方法があります。
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・打ち抜き加工(1tまでの厚みで対応)
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・プロッタ加工(1tまでの厚みで対応)
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・プレス抜き加工(1tを超える厚みも対応可能)
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・旋盤加工(1tを超える厚みも対応可能)
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・ルーター加工(1tを超える厚みも対応可能)
打ち抜き加工
打ち抜き加工とは、ポンチによってバルカナイズドファイバーを打ち抜く方法です。プレス加工と異なり金型は不要で、木型(ビク型)などの安価な型で大量に生産できるメリットがあります。立体的な加工は無理で、二次元の加工しかできませんが、平面的な形状や穴あけ程度であれば、打ち抜き加工で実現可能です。
プロッタ加工
プロッター加工とは、CADの図面どおりに刃物が動いて、板状の品物に切っていく加工方法です。型代を必要としないことがメリットで、20個未満程度の小ロットで薄いシート状のシリコンゴムをカットするときに適した方法です。
プレス加工
プレス加工とは、金型にバルカナイズドファイバーを入れて、上下からプレスして成形する方法です。金型の形状を工夫することで複雑な形状にも対応できるメリットがあります。金型が高価になるので、打ち抜き加工やプロッタ加工に比べると相応の生産量が必要になりますが、生産量がまとまるとコストメリットの出る加工方法です。
旋盤加工
旋盤加工とは、旋盤によって材料を削りながら形状を作っていく加工方法です。
ルーター加工
ルーター加工とは、側面に刃のついたドリルのような円形のビットを使って素材の端面をなぞるように切る方法です。
バルカナイズドファイバーを加工する際の注意点
際の予備知識として、以下2つの点に留意しましょう。
バルカナイズドファイバーで注意することの1つが、湿気を吸って寸法が変わることです。カタログに記載されている寸法から4~6%ほど大きくなることもあり得ます。薄い材料の場合、徐々に平面性が失われてたわんでしまうこともあります。
そのため細かい寸法公差を指定するのが難しく、実際の加工場面では寸法公差の実現が困難であることをお伝えするケースも少なくありません。加工直後には精度が出ていても、湿気を吸うことで寸法公差から外れてしまうからです。
バルカナイズドファイバーは、製造直後の状態では大きすぎて運搬が困難なため通常半分に切った形で流通しています。この大きさのことを半裁と呼んでいます。たとえば、定尺一枚を注文すると通常は半裁が2枚届けられるのです。もちろん特別な事情があって大きいサイズのものが欲しい場合は切らない形での流通も可能ですが、その場合は送料が高くついてしまいます。
まとめ:バルカナイズドファイバーの加工なら東京機革
バルカナイズドファイバーは、強靭性、絶縁性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱性、耐油性などの機械的特性に優れた素材で、電気機器の絶縁素材としての用途をはじめとして、さまざまな用途に用いられています。その色から赤ファイバーとも呼ばれています。
昭和8年創業の加工のプロである東京機革では、主に北越東洋ファイバー株式会社の標準品HB-77(R)での加工実績が多数あり、この記事でご紹介した方法を中心に加工のご依頼に対応可能です。バルカナイズドファイバーの加工にお困りなら、株式会社東京機革までご連絡ください。短納期・小ロットであっても可能な限り対応してまいりますので、まずは電話(03-2623-0111)、FAX(03-3621-1923)、または以下のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。さまざまな加工方法の中から最適な組み合わせをご提案いたします。
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