革パッキングについて

 

1.素材

 
パッキング用には牛皮を使用します。動物から剥いだ皮(生皮)はそのままでは腐敗しやすく、また腐敗しにくいように乾燥させた皮は品質が悪く、成形が自由にできず、弾性に乏しいなどの欠点を有するため一般工業用には使用できません。そこで生皮を鞣(なめ)して鞣し革にします。鞣すという作業は生皮に対していろいろな薬品を使用して、腐敗せず強靱で弾性のある状態にすることです。牛革パッキンの素材はなめし剤によってタンニンなめし革、クロームなめし革があります。
 

(1)タンニンなめし革

木の皮、実、幹等から抽出した植物性タンニンでなめしたもので、褐色です。全般に硬くて引張強さ、耐摩耗性が大きく、伸びが少なくて水を吸収してもすぐ乾燥するため、油圧用。空圧用、水圧用として広く使用されます。低温になってもゴム材料のように硬くなることはありませんが、70度以上の高温では使用できません。
 

(2)クロムなめし革

鉱物質の塩基酸クローム塩でなめしたもので、クローム塩の色、即ち空色をしており、柔軟で伸縮性に富み、熱、摩擦に強く 高温で使用する油圧用のパッキン材料としてすぐれています。タンニン革に比べて伸縮が大きく、多孔質です。皮革については従来皮革材料製造業者から購入していました。時代の流れでバッグや靴などの皮革製品は国内で製造せずに海外から製品で輸入するようになってきています。それに伴い国内の皮革材料製造業者はどんどん事業規模を縮小せざるを得なくなっています。そのためクローム革パッキングの材料として十分な品質のものが手に入らなくなってしまいました。残念ながらほぼ生産終了となりました。
 

(3)チオコール含侵

溶剤用にはチオコールを含侵させた革パッキンが従来使われていました。ゴムのような柔軟性があります。弊社では現在製作していません。
 

2.革パッキングの特長

 
パッキングは圧力流体の流れを防ぎ、その流体の圧力を有効に仕事に変える働きをしますが、その圧力流体が水、海水、油、空気、窒素等の場合には革パッキングが一般に広く使用されます。革パッキングは特にパッキング用としてなめされた強靭な革の繊維の間に使用目的に応じた各種の充填剤を浸透させて気密性とし、所定形状に成形したものであり、高圧、低圧の往復運動、回転運動、静止等の漏れ止め用として使用されます。革パッキングの特長は次の通りです。
 

(1)耐久性大

革は強靭な繊維の網状組織からできているため、高圧によく耐えます。一般に水中での使用より油中で使用する方が寿命が長く漏れも少ないです。また、パッキングの接触する金属の表面を磨くかメッキした方が寿命が長く漏れも少ないです。
 

(2)摩擦抵抗が少ない

高度の弾性を持った繊維の網状組織で金属面に接触するため、金属面への吸着や油切れがなく、一般に摩擦抵抗が小さいです。
 

(3)広い温度範囲で使用可能

皮は温度による固さ、弾性等の変化が小さく、特に低温でも柔軟性を保つため広い温度範囲の下で使用できます。(タンニン皮 −40℃~60℃ クローム皮 −40℃~100℃)
 

(4)広い圧力範囲で使用可能

材料と充填剤の選択により硬軟自由のパッキングを作る事ができるため、広い圧力で使用できます。 (気体圧力0~20Kg/平方センチメートル
液体圧力0~500Kg/平方センチメートル
油圧力0~1000Kg/平方センチメートル )
 

(5)緊塞作用が確実

革パッキングは強靭で弾力性があるため、本質的にもとの状態に戻ろうとする復元力を持ち、多少の寸法の相違や偏心運動にもよく追随して漏れ止めの効果を上げることができます。万一傷が出来て漏れ出してきてもある程度繊維が傷を埋めていく働きをするので、ゴムのように即座に交換しなければ全く使いものにならない、ということはありません。
 

(6)コスト


ゴムパッキングの場合、最初に数十万円の専用の型を製作する必要があります。一方革パッキングの場合、そろえほど大きくないものであれば新しい型をいちいち起こす必要はない場合が多いです。革パッキング用にある程度汎用的に使用できる金型を一通り所有しております。弊社所有の金型で製作できる範囲の寸法であれば型代はかかりません。
(正確には、J型は治具が必要になります。またV型は、汎用型ではなく、個別の金型がなければ製作できません。比較的小さい場合は治具で代用できます。)型を起こす必要がなければ、製作個数が少ない場合は革の方がコストの総額は安くあがります。
 

(7)型の製作について

比較的大きい寸法のパッキンで、弊社で金型を持っていない場合、金型をつくらないと製作不可能な事があります。しかし今となっては型からつくるのは現実的ではありません。相当な費用がかかりますし、数十年新規の型を製作したことはありませんので、製作ノウハウは既に失われてしまいました。たまに金型からの見積依頼を頂きますが、辞退させていただいています。
お客様が型を製作して支給するというお話をいただくこともありますが、革パッキン用金型製作の経験のない加工屋さんには難しいと思います。研究開発のつもりで何度でも試作する予算があれば話は別ですが・・・。

 

(8)在庫・標準寸法・寸法公差

在庫はありません。標準寸法は特にありません。お客様に寸法を指定していただきます。小さいものについては手持ちの型がない場合、製作が可能なものについては一回限りの治具を製作してご指定通りの寸法で製作することになります。特殊な寸法のものですと製作不可能な場合もあります。
ある程度大きいものになりますと一回限りの治具を作るというようなことが出来ません。つまり手持ちの金型の寸法で製作することしかできません。ある程度大きいものでU型やV型、J型の金型がないものはほとんど製作不可能です。

L型については手持ちの金型を組み合わせて製作が可能な場合もあります。しかし殆どの場合ご指定の寸法ぴったりには出来上がりません。

弊社の革パッキン用金型の大きなものは基本的にはインチ寸法でできています。つまり外径については3.2ミリおきにしかありません。
ある程度近い寸法の型で製作することになります。2ミリ程度寸法が違う型で製作する場合も出てきます。
また、牛の皮という天然の材料を使っているため材料の物性は一枚づつ違います。同じ条件で製作しても同じものができないことがあります。寸法のばらつきが発生することもあります。
革パッキンはゴムと違い柔軟性があります。多少寸法が違ってもひとたび油圧機械に組み込んで圧力をかければシリンダーの寸法になじんで問題なく使えます。ただ、多少寸法が違うものを組み込むためには現場で少し工夫が必要な場合もあります。パッキンの寸法が大きい場合、機械油に浸して柔軟にして傷をつけないように押し込むことになります。パッキンの寸法が小さい場合必要に応じてパッキン剣先部がシリンダー内面に接触する力を大きくする目的でリングパンダや押さえ金等を使用するといった方法があるようです。
かつてはそのような事情をユーザー様の工場の現場の方がよく理解されていて、工夫して使用されていましたが、最近ではそのような方が少なくなったようです。図面もゴムの特徴を前提にしたような形状や寸法公差を記載したものが多くなりました。寸法が違っていて取り付けられないとか受け入れ検査を通らないというような事が起こるようになりました。中には、何十年も同じ製品を納めているのに突如として受け入れ検査が厳しくなって不合格となるケースもあります。
そのたびに、革はゴムとは特性が違うこと、寸法精度がゴムの場合よりラフでも使用に差し支えないということを説明させていただくのですが、ユーザー様との間に何軒も商社が入っている場合が多くなかなか理解していただけない事もあります。
かつてのように数量がたくさん出るのであれば専用の型をつくればある程度は解決できるのですが、今はもうそういう時代ではなくなりました。既存の汎用の型を使ってご希望の寸法に近い製品を作ってそれを工夫してなんとか使っていただく必要があります。

近い寸法の型がまったくない場合、特殊な形状の場合などは残念ながら製作することはできません。受注を辞退することになってしまいます。

 

 

3.形状の種類と寸法表示

  
革パッキンの形状はほとんど次の4種類です。
1.L型(腕型)
2.U型(溝型)
3.V型(山型)
4.J型(帽子型)
 

L型(腕型)

外径×内径×高さ×革の厚さ

(例)120゜×66゜×20h×3t

PCD85゜×11゜×4ケ

L型革パッキン

 

L型革パッキン

 

 

U型(溝型)

外径×内径×高さ×革の厚さ

(例)110゜×85゜×17h×3t

U型革パッキン

U型革パッキン

 

V型(山型)

外径×内径×角度×革の厚さ

(例)66゜×34゜×90゜×5t

 

v.JPG

J型(帽子型)

 外径×内径×高さ×革の厚さ

(例)96゜×68゜×20h×3.5t

J型革パッキン

J型革パッキン

  
  

 いわゆる椀革(わんかわ)と呼ばれる、コーキングガンや自転車の空気入れ用などに使われる革パッキンは取り扱っていません。技術的に製作できないことはありませんが、大量の品物を安く製作する体制がありません。

 

 

4.製作工程

 

(1)裁断

パッキング用革を裁断する。大きいものの場合は扇状に裁断し、接着して丸くする。
 

(2)第一次成型

革に水を含ませ、金型に入れて10分程度放置したのち取り出す。これである程度の成型がされている状態になる。
 

(3)乾燥

陰干しで自然乾燥する。天候により3日~7日。次工程の充填材充填を十分に行うために水分を追い出す。
 

(4)充填材充填

加熱して溶解した充填材をパッキングにしみこませる。革の繊維組織は多孔質で通気性を有するため単独では流体の浸透漏れが生ずる。このため油脂、ろう等を成分とする充填材を用いて網様層の組織を埋めて浸透漏れを防ぐ。
 

(5)第二次成形

金型を熱湯に浸して熱くする。この熱くした金型にパッキングを入れる。プレスで押して約一時間放置。自然冷却後取り出す。 充填材の成分が冷えて固まり、パッキンも固くなり、形が整う。
 

(6)仕上げ

高さ加工、小穴加工などを行い、指定寸法に仕上げる。
 

(7)寸法検査、外観検査、包装

 

5.具体例

U型革パッキン ゴム芯入り

U型革パッキング ゴム中芯入り

110x85x17x3

上にある写真と同じ革パッキングですが、中芯にゴムを入れて使用します。

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